加藤: 二瓶先生、本日はよろしくお願いします。
二瓶: こちらこそよろしくお願いします。
加藤: 都市大等々力中学校のHPを拝見させていただいたんですが、まずトップページに「等々力改革 第2ステージスタート」とありましたが、これは具体的にどのようなことなのでしょうか。
二瓶: 2009年に旧武蔵工業大学が総合大学となり、幼稚園から大学まで校名変更をし、東
京都市大学グループが誕生しました。2010年私どもは「noblesse oblige」教育理念の基、次世代型の学校を作ることを目指し、共学を新設しました。第1ステージではシステムにこだわり、システム4A、これは毎朝未到達の領域を確認するために到達度テストを実施し、帰りまでにチューターが採点、分析専門の職員が
帰りまでに分析し、未到達の部分があれば、その日のうちに補習を実施。また、自学自習力の涵養のため自習室を整備(中1~高2までは夜20時、高3は夜21時まで使用可)し、チューターが在中し、質問を受けます。それを管理するのがTQノート(時間管理日課表)です。全生徒が個々に自分の学習計画を作成します。システムLiP はリテラシーの授業でコミュニケーション能力や文章を読み解く力を養います。また、実験重視の理科教育(Super Science Todoroki program)は中1・中2までで200近い実験を行い実験ノートを記録として残します。英語国際教育ではイギリスの名門オックスフォード大学や医療系の実験実習を備えたオーストラリアのバーシテイ・カレッジでの研修など様々なプログラムを用意しました。それが第1ステージですね。そこでは授業スタイルを確立し、これまでとは全く異なった次世代型の新たな学校としてスタートしました。第2ステージでは「システムから人へ」を目標にソフト面を充実させる方向へシフトチェンジしました。例えば更に S特クラスの新設を始め、授業では知識構成型ジグソー法の導入、ICTを活用した授業形態の充実、また、高校1年次には約1年間(カナダまたはオーストラリア)海外留学する特選 GLプログラムも用意しています。
加藤: 進んでいますね。
二瓶: SICという設備もあります。SIC shortと名付けられたボードがあり、ボードに様々なキーワードが浮かびます。そこに手をかざすだけで関連する書籍がボード上に紹介されます。
加藤: 素晴らしいですね、後程見学させてください。さて、そういった取り組みが実際に大学進学実績につながってきていると思うのですが、今年の実績はどうだったのでしょうか。
二瓶: 今年は既卒生ですが、東大合格者が出ました。それ以外でも国公立大合格者も増えていますし、早慶上理も93名ほどの合格者が出て過去最高でした。Gマーチも179名ほどですので、成果が上がっていますね。そういったことも評価につながっているのか、今年は受験者数が大幅に増えました。
加藤: やはりS特志願者が多いのですか?
二瓶: そうですね、S特も含めて2月に実施した試験での志願者数合計が3000人を超えました。
加藤: 大人気ですね。
二瓶: 今年はしかも合格者の手続き数も多く、また手続き後の辞退者数も少なかったので、昨年より入学者数が増えてしまいました(笑)
加藤: じゃあ、来年は合格者を絞る方向ですか(笑)
二瓶: 今年度のようにはいかないと思います。
加藤: 1日午後の算数1科入試はどうでしたか。
二瓶: 他の学校でも算数1科入試を実施する学校がありますが、私どもでは事前に難易度の高い算数の問題を出題すると説明していましたので、S特入試の方に流れる生徒が多かったです。実際に受験者数は男女合わせて18名で、合格者数は3名でした。
加藤: 絞りましたね。来年以降も同じパターンで実施を予定されているのでしょうか。
二瓶: 今のところその予定です。
加藤: 都市大等々力に合格するために学習しておいた方が良いことは何かありますか?
二瓶: やはり過去問をしっかり学習することが良いと思います。同じレベルの学校の過去問を解くという方法もありますが、それよりもやはり都市大等々力の過去問をしっかり解くことが重要ですね。
加藤: さて、ちょっとお伺いしにくいのですが、今年の入試での競合校はどちらだったでしょうか。
二瓶: やはり広尾学園が多いと思います。また、三田国際学園が増えていますね、距離的にも近いですし。あとは東京農大一も比較的多いです。
加藤: 続いて帰国生に関してお伺いします。12月に帰国入試を実施していますが、校内での帰国生の生活はどのようになるのでしょうか。確か英語は取り出し授業をされていたと思いますが。
二瓶: そうですね、英語は取り出し授業をしています。最近では英検1級、準1級レベルの生徒が増えてきていますので、取り出し授業の中でも割と差が出ていますね。
加藤: その他の授業はすべて同じクラスですか。
二瓶: はい、よく帰国生だけで国際学級のようなクラスを設置する学校もあるのですが、やはりそうなるとそこだけ別世界みたいな感じになってしまいます。私どもはクラブ活動も含めて一緒にやっています。あとは帰国入試が12月ですので、例えばそこで特選クラスに合格した生徒が、2月のS特入試にチャレンジするというケースも増えています。
加藤: 帰国生が増えてくると、やがて海外大学を目指す生徒も増えてきそうですね。
二瓶: 帰国生だけでなくグローバルリーダーを目指すということが理念になっていますし、先ほど申しましたように約1年間の海外留学制度もありますので、一般生の中からも海外大学を目指したいという声が挙がってます。
加藤: 続きまして日々の授業についてお伺いします。小テストや課題、補習などは多めだと思うのですが、実際のところはどうでしょう。
二瓶: そうですね、生徒にはある程度の負荷をかけて行かないと伸びていきません。家で30分~60分の学習で済んでしまうような課題では生徒がだれてしまいます。
加藤: 小テストの再試験や補習などでクラブ活動に制限が出るのでしょうか。
二瓶: 再テストや補習がクラブ活動と重なる場合は、再テストを優先します。講習や講座と重なる場合は時間をずらして実施しますね。また補習では卒業生にチューターとして参加してもらっています。
加藤: 折角クラブ活動の話が出ましたので、そのことをお伺いします。ずばり人気のあるクラブは何でしょうか。
二瓶: 男子は野球やサッカー、弓道、女子はチアリーディングやバトンが人気です。特にチアリーディング部では、全国大会を三連覇しています。
加藤: 三連覇は凄いですね。
二瓶: ありがとうございます。あと、弓道も人気があります。
加藤: 弓道ですか。
二瓶: 女子校時代から弓道場を併設していたので、人気なんでしょうね。
加藤: ちなみに野球とかは強いのでしょうか。
二瓶: いやいや(笑)。ただ、試合に負けたとしてもその時に連帯感とかが高まりますからね。教育としても良い効果が出ていると思います。
加藤: 生徒の通学範囲はどうなのでしょうか。
二瓶: 東京では世田谷区、目黒区、大田区、品川区が多いです。神奈川では横浜の青葉区、都筑区、港北区、川崎では高津区、宮前区、中原区などです。要するに東急沿線の生徒が多いということですね。
加藤: 千葉や埼玉の生徒はいますか?
二瓶: ほとんどいません。最近では若干、練馬方面の生徒が増えてきました。あとは南武線を利用した三多摩地区の生徒も増えています。
加藤: さて、最後に学校行事について1つお伺いします。HPを見ると2月にロードハイクというイベントがありますよね。高3を除く生徒が20km、30km、40kmのコースから自分で選択して歩くようですね。全生徒が参加されるのですか?
二瓶: はい、高3を除く全生徒が参加します。40kmコースなどは東京の羽村の方から延々と多摩川に沿って歩き、都市大グランドを目指します。保護者も60名くらいがボランティアとして参加し、炊き出しとかのお手伝いしてもらっています。
加藤: この手のイベントは、例えば巣鴨中学の夜間大菩薩峠越えや、早稲田中学の利根川歩行など、わりと伝統ある学校の伝統行事という感じもします。洗練されたスタイルで指導をしている都市大等々力が、こういったイベントを企画されているのはちょっと意外だなという気がしたのですが。
二瓶: やはり共学化した時に、このような伝統校の良いところもしっかり取り入れていこうということになりました。また、昨年は完走できなかった生徒が、今年は完走できたりすると、大きな達成感にもつながりますしね。
加藤: それでは二瓶先生、今日はお時間をいただき大変ありがとうございました。
二瓶: いえいえ、こちらこそ今後ともよろしくお願いします。
この後、二瓶先生に学校内を案内していただきました。もう定期テストが終わり、ほぼ春休みに入っているのに、自習室を使って勉強している生徒が何人もいました。また、前述したSIC shortのボードなどは実に近未来的で面白かったです。
また理科室にあるいくつもの骨格標本はすべて生徒が作ったもので、そのクオリティの高さには驚かされました。是非一度、学校を見学してみると良いと思います。
(2018年3月14日取材)